学校できちんと習うことはないけれど、生きていくうえで知っておくべき大切なことは、たくさんあります。例えば、妊娠や出産について。これは女性だけが関わることではありません。男性も大切なパートナーのために、そして産まれてくる自分の子どものために、学んでおく必要があります。命に関わることですから、「知らなかった」では済まされません。都久志祭の実行委員会として、女性ひとりひとりはもちろん、できるだけ多くの人に正しい知識を身につけてもらいたいと思っています。
セックスについても、同じことがいえます。妊娠や出産と共通するのは、正規に学習する機会がないということ。その代わりセックスについては、アダルトビデオや、過激な性描写がある雑誌やマンガなど、商業用ポルノグラフィが世の中に氾濫しています。これらを見て、セックスを”学んだ”つもりになっている人が多いのが、困ったところです。
それならセックスのテクニックについて書かれた指南本を読めばいいのかというと、これも考えもの。ちょっと書店をのぞけばたくさんの指南本が並んでいますが、なかには男女それぞれの身体について何の知識もないまま、間違った自己流テクニックを堂々と紹介しているものが多数含まれていて驚かされます。セックスにおいて、医学的、科学的に裏づけされた知識を学ぶというのが、いかに難しいことであるかがわかります。
では、同じ″生きていくうえで”知っておくべき大切なこと”でありながら、セックスが出産や妊娠と違っているのは、どんな点でしょうか?それは、べッドでのテクニックが間違っていたからといって、生死が左右されることは、まずないという点です。だからこそ、セックスは”学ぶべきものではないもの”として軽視されているのでしょう。でも、よく考えてみてください。セックスに対して無知であるがゆえに、人の心身を傷つけることは十分にありえるのです。
商業用ポルノグラフィが誇張して描いているテクニックを、または、裏づけのない指南本のテクニックを真に受けて、男性が女性に乱暴な触れ方をすると、どんなことが起こるでしょうか?まず、女性の身体に痛みが走ります。そんなことをされても濡れるわけがないし、その後、乾いたままの性器にペニスを挿入されるなんてことになったら、その苦痛は男性には想像できないほどのものです。男性の愛情が感じられず、セックスに対して恐怖心を抱くことにもなりかねません。
こうした思いは、ふたりの関係そのものにも影を落とします。自分に痛い思いをさせる相手を愛せる人はいるでしょうか?パートナーとのあいだに溝ができ、関係が破綻し、二度と心が通いあわなくなる ― 間違ったセックステクニックには、そのくらいの破壊力があります。身も心も裸になって抱きあうというのは、究極のコミュニケーションです。快感を共有することで、パートナーのことを理解し、互いの心に愛情を注ぎあうことができます。それなのに、セックスによって傷つく人がいるというのは、とても悲しいことだと、私は常々思っていました。
そんな不幸な人をこれ以上増やさないために、正しい知識やテクニックをセックスイベントの実行委員会の委員長として広めたい。そう考えた私は、2007年に日本性科学会の一員となりました。学会発表に参加したり、研究会に出席したりという活動を通して、医療、科学、文化など様々な方面からセックスについて研鑽を重ねました。海外でも同様の学会が開催されているので、積極的に参加するようにしています。そうして構築された私自身の見解をまとた情報を通じて、皆様のお役に立てれば幸いです。
なお都久志祭はオールジャンルイベント「Comic Stream」を開催中です。次回開催は2024年12月1日。大九州合同祭として 西日本総合展示場新館にて開催致します。企画案内・イベント詳細につきましては大九州合同祭の公式WEBをご覧下さい。