2010年、イギリスのキングスカレッジに在籍する研究チームから、Gスポットについてのユニークな研究論文が発表されました。さまざまな世代の双子の女性を対象に、Gスポットが誰にでも存在するかどうかを調査したものです。
これは、性科学会でも多大な関心が寄せられているテーマです。女性には膣でイケる人と、そうでない人がいます。なぜそのように分かれるのかを考えると、もしかするとすべての女性にGスポットがあるとは限らないのではないかという仮説にたどりつくからです。論文によると、56%の女性が自分にはGスポットが「あると思う」と答え、残りの女性が「ないと思う」と答えました。ただし、調査方法は、対象者に「Gスポット」という語句を用いずにいくつかの質問をすることで、彼女たちに「自分にGスポットがあると思う」または「ないと思う」のどちらかを自己申告させるというもので、非常に主観的な内容となっています。それゆえ、調査結果の信頼性が高いとはいえないのが残念なところです。というのも、「自分にはGスポットが絶対にある!」と断言できる人のほうが、圧倒的に少ないと思われるからです。
研究はさらに掘り下げられ、オーガズムを体験した女性はどれくらいいるのかという問いに発展しています。驚くべきことに、「Gスポットがないと思う」と答えていた人の約3割がオーガズム体験があると答えています。これによって、研究チームは、スポットと膣でのオーガズムのあいだには関連性がないのではないかと疑問を呈しています。
しかし、ひとことに”膣でイク”といっても、Gスポット以外にポルチオ(子宮頸部)でのオーガズムがあるため、この結論はいささか短絡的な印象を否めません。ただ、この結果を見た世界の性科学研究者たちは「Gスポットがない人もいる」という可能性については、納得を示す傾向にありました。こう考えたほうが、膣でイク人とイケない人がいるのはなぜかという疑問が、すっきり解明できるからです。
では、なぜGスポットがある人と、ない人に分かれるのでしようか?キングスカレッジに在籍する研究チームは、Gスポットがある人とない人がいるという前提から新たに生まれたこの疑問の答えを見つけるため、さらに調査を重ねました。その方法は、一卵性の双子女性と二卵性の双子女性に、Gスポットの有無を質問し、それぞれの回答が占める割合を比較するというものです。
結論としては、一卵性の双子で「ふたりともGスポットがあると答えた」あるいは「片方だけGスポットがあると答えた」割合と、二卵性の双子で「ふたりともGスポットがあると答えた」あるいは「片方だけGスポットがあると答えた」割合のあいだには、ほとんど差かなかったとしています。同じ双子でも、一卵性であれば遺伝的に同じ特質を持ち、二卵性であれば異なる特質を持っています。このことは、Gスポットの有無は遺伝によって決まるものではないということを意味しています。
スポットの有無については、今後、さまざまな角度から研究が進むと思われます。例えば、なぜGスポットがないのに膣でイケるのか、Gスポットの有無で感度や、セックスに対する積極性は変化するのか。なかには、膣の組織の一部を取り出して観察しても、神経終末が集中した部分の存在が証明できないため、Gスポットの存在そのものが”神話だという研究者も多くいます。Gスポットという、いまだ謎につつまれた性感帯を解明するため世界各地で行われている研究に、今後も要注目です。